ぼくがまだ若かりし頃。あれはまだ大学生の頃。田舎を離れて一人、貧乏学生の貧乏暮らしをしていました。

引っ越しの片付けもあらかた終わり、すっきりした部屋でのんびりとくつろいでいた時に奴は意気揚々として、早速やってきました。

そう、秘密のベールに包まれた謎の組織、いや、悪の組織の一員ＮＨＫ集金人です！！

奴らの嗅覚と直感やら第６感やらは異常です。人間の能力を遥かに超えている。

引っ越しをしたとたん、必ずそそくさとやってくるのです。

まるでこう言っているように。

「桐生さん、また引っ越したんですね。いくら引っ越したってダメですよ。私からは逃げれませんよ。だって、私には分かるんです。あなたがどこに引っ越したのか？っていうのがね。手に取るように分かるんですよ。そして、いつも引っ越しがあらかた片付いた頃にお邪魔しているんです。部屋が片付いて、すっきりして新生活が始まったって感じている頃が一番契約が取りやすいですからね。」

そして、奴らはインターホンを鳴らす。何度も鳴らす。

居留守を使っても効果は無い。なんせ、人間離れした嗅覚と直感やら第六感があるからです。

「桐生さん、いるのは分かってるんです。今までテレビを見ながら、引っ越しそばを食べていたじゃないですか。出てきてくださいよ。ＮＨＫ受信料を払うのは国民の義務なんです。ちゃんと公共料金払ってますよね？なんでＮＨＫは払ってくれないんですか？」

そしてぼくは、こう思う。「いや、俺がいることが奴に分かるはずがない、だって電気も消しているし、物音一つも立てていないじゃないか。奴に分かるはずがない（＞＜；）」

だが、ＮＨＫ集金人は諦めない。インターホンを押しても出てこないと分かると、今度はドアを「ドンドンッ！」と強くノックしてくる。何度もノックしてくるのだ。

「桐生さん、まだ出てきてくれないんですか？いるのは分かってるんです。私も忙しいんですよ。次のお宅にも早く行かなければならないんです。」

ノックの音はさらに、荒々しく強くなっていく。

「桐生さん、いるのは分かってるんです。本当ですよ。証明してみましょうか？」

少しの沈黙があった。

「桐生さん、あなた今、電気を消して、布団の上で毛布にくるまっている。でも、寝てはいない。あぐらをかいた状態で毛布にくるまっていますね。そして、じっとドアを見つめている。そして、すぐ目の前には食べかけの引っ越しそばと缶ビールが置いてある。箸はまだ右手に持ったままじゃないですか。早く食べないんですか？せっかくの蕎麦が冷めてしまいますよ？ま、いいです。また必ず来ますね。近いうちにまた来ます。今度はちゃんと出てくださいね。国民の義務ですから。それでは、私はこれで失礼させてもらいますよ。」

そう言って、ＮＨＫの集金人はどこかへ行ってしまった。奴がどこかへ行った後もしばらくは、奴に見られているという感覚が無くなることは無かった。

なぜだ。なぜ、俺の存在が分かるんだっ！！

俺はＮＨＫ受信料は払わない！！

もう一度言う。俺はＮＨＫ受信料は払わない！！

ＮＨＫ受信料の料金

ＮＨＫ受信料みんなは払ってるの？

ＮＨＫ受信料は払わなくて良いという論理！！

ＮＨＫ集金人は暗黒世界からやってきた。

次回予告